先述16章[質量とエネルギーの等価性]でも述べたように、運動する電子の進行方向の長さはγ倍で拡張し長くなる。
ならばそこで、水素原子内で円運動を行う電子であるが、これはその接線方向へ直進運動を行うとともに、円軌道の中心に位置する陽子に向かって絶えず加速されているのであるから、常に中心に向かって加速されているところの電子は、その円運動が続く限りは無限にみるみると拡張していくものと考えてよいはずである。
そしてこの電子の拡張は、下図のようにその進行方向であるところの円軌道に沿って拡張していくものと考えられ、右図のようにどこまでも棒状に拡張するというわけではないはずである。
すると、当初正電荷としての単独の陽子に負電荷としての電子が捕らえられたとき、円軌道の進行方向に沿って拡張した電子は、やがて一つの輪につながることになり、そこには右図のようなリング状の電子が出現するものと考えることができる。そしてそのリング状電子は、それら全体として回転しながら、そのリング状の一つの輪そのものが更なる拡張を続けていくものと考えられるのである。
水素原子内において円運動を行う電子が、その円軌道に沿ってみるみると拡張し、一つの輪につながってリング状になっているというのであれば、そのリング状電子を包み込むように付随しているはずの回転拡張場についても、やはり円環状(トーラス状)に、一つの輪に結ばれているものと考えねばならない。
そして、一つの輪につながったリング状電子と円環状の回転拡張場は、それら全体としての回転運動が続く限りは、どこまでも無限に続く拡張をなしていることになる。
※{この場合に、円運動を行う電子はあくまでもその円軌道に沿った進行方向へのみ拡張するのであるから、一つの輪につながったリング状電子の太さ(第11章🔷《》かっこ内で述べた電子の直径b)は変化しない。したがってリング状電子は、右図xyの二次元面におけるその半径rだけが拡張する。
一方、これを包み込むように展開する円環状の回転拡張場は、z軸も含めた三次元のあらゆる方向へ立体的に拡張するものと考えられ、つまり、リング状電子も円環状回転拡張場も、ともに同様な無限の拡張をなしているのではあるが、その拡張の仕方はリング状電子のほうはその太さは変化しないxyの二次元面でなされるが、円環状回転拡張場のほうはz軸方向も含めた三次元のあらゆる方向へ立体的に膨張し、拡張しているものと考えられる。
なお以後は、上記の円環状回転拡張場は、これを略して円環状拡張場と称するものとする。}
リング状電子がみるみると拡張し、その半径rもみるみると長くなるのであれば、その拡張は当然みるみると連続的になされていることになる。この場合に、リング状電子全体の質量が円周上(リング上)の任意な一点bに集中し集約されているものと仮定するならば、その質点化されたリング状電子であるところの質点bが円軌道運動を行うとき、いずれにしてもその角運動量Lおよび質点bの速度vは
L=mvr v=L/mr
と表わすことができる。ゆえに、上式において質点bの回転半径rがみるみると連続的に長くなるのであれば、その速度vはみるみると連続的に遅くなっていることになる。
一方15章で述べたように、直線軌道を運動する電子の回転拡張場の広がり(半径r)は、その速度vに反比例するのであるから、これは電子の速度vがより遅い(v1)ほどより大きく、より速い(v2)ほどより小さくなる。
ということは、いずれにしてもリング状電子の速度vはみるみると連続的に遅くなっているのであるから、右図円環状拡張場の半径rはみるみると連続的に長くなっていることになり、結果的にこの円環状拡張場は三次元のあらゆる方向に拡張し、膨張していることになる。
ところがここで、前章【陽子の構成粒子】で述べたように、よりマクロからの視点における収縮場をもつ陽子の大きさはあくまでも一定なはずである。ということは、中心に位置する陽子は一定不変でありながら、それを取り囲むリング状電子と円環状拡張場はみるみると大きくなっていくのであるから、そのリング状電子は、中心に位置する陽子から徐々に離れていくということになる。
すると、この場合のリング状電子と陽子の間に働く力※はみるみると減衰していくことになり、このような非定常かつ不安定な原子模型にあっては、ごく短時間でバラバラに崩壊してしまうものと考えねばならない。 ※{引力としてのクーロン力F=kq²/r²と同一}
しかし、いずれにしても実際の水素原子はあくまでも有限にして一定であり安定である。ということは、本来はみるみると膨張しやがては崩壊してしまうはずの水素原子が、実際には一定なのであるから、そこにはその水素原子を定常で安定なものにしようとする、何らかの機能なり力なりが働いているものと考えられるのである。
ところで先述第15章で述べたように、本論における運動する電子のド・ブロイ波長λと回転拡張場の円周Ⓛは本質的に同一である。そうすると、かつてボーアによって提示された水素原子模型における、いわゆるボーア半径約53pm(ピコメートル)と、円環状拡張場の半径rはまったく等しいものと考えねばならない。
なぜならば、ボーア半径とはこれに2πを乗じたものがそのまま基底状態の電子におけるド・ブロイ波長λに等しいからであり、この場合にド・ブロイ波長λと回転拡張場の円周Ⓛ(2πr)が等しいのであれば、そのボーア半径rと円環状拡張場(上図の円環状に展開する回転拡張場)の半径rも、やはり等しいということになる。そして、ボーア半径と円環状拡張場の半径rが同一ということは、リング状電子の半径rと円環状拡張場の半径rもまた同一であるということに他ならず、基底状態におけるその円環状拡張場は、いわば穴のないドーナツのような形状になっていることになる。
※{下図n=1,2,3,におけるド・ブロイ波長λは図1に、ド・ブロイ波長λを円環状拡張場の円周Ⓛに置き換えた場合の新たな水素原子模型の詳細は、図2および図3に示される。なお、図1における粒子状の電子の速度vは、プランク定数hをド・ブロイ波長λで割ったときの式h/λ=mv(あるいはv=h/2πmr)から導出されたものであり、この場合に電子の速度は、基底状態の速度v1よりも励起状態の速度v2,v3,の方が、それぞれ1/2倍、1/3倍で遅くなるということを述べておく。}
基底状態における円環状拡張場が穴のないドーナツ状になっているということは、これは円電流が作り出す磁場の形態とまったく同様であるということができ、その磁気モーメントはいわゆるボーア磁子μBに等しいものと考えることができる。
すると、陽子の収縮場によって捉えられた電子が円軌道運動を行い、これがリング状に一つの輪につながったときに初めて、これに付随して現れた円環状に展開する回転拡張場がボーア磁子に等しい磁気モーメントを持つのであるから、この場合に、軌道運動する以前から、粒状の回転する電子が小さな磁石としてすでにボーア磁子(℮ℏ/2me)に等しいスピン磁気モーメントを持ち、しかもそのスピン角運動量が1/2ℏであるなどということは、あらゆる意味🔹においてあり得るはずがないということになる。
🔷《本論における一個の電子は、複数(恐らくは2個)の光子によって構成されているのであるから、この電子が回転するときの速度、すなわちその個々の光子が円運動するときの速度は、いかなる場合も光速度Cのはずである。ということは、たとえば「大きさを持つ電子がスピンするとき、その表面の回転速度が光速度をこえてしまう・・・」などということは当初からあり得ないことになる。
しかし、第10章【電子の内部構造】で述べたように、静止状態にある自由電子は、これを構成する複数光子の波動が円形定在波(円形定常波)になっているのであるから、この定在波(進行せずにその場に留まって振幅運動する波動)としての電子については、その回転速度はゼロであると言わねばならず、スピン角運動量もやはりゼロということになる。ならばこの回転(自転)せざる電子がスピン1/2などといった不可解きわまる物理量を持ち、さらにはボーア磁子に等しい磁気モーメントをも持つなどということは、もとからあり得るはずがないものと言わねばならない。
なお、その個々の光子が円運動するときの速度がいかなる場合も光速度Cであるとするならば、その光子の軌道半径は
re=ℏ/meC ≒ 3,861×10-19m
ということになるが、このよりミクロからの視点による個々の光子の軌道半径が、そのままよりマクロからの視点による一個の電子全体の半径でもあるとは言い切れず、後者においては何らかの摂動による補正(第15章✧電子の異常磁気モーメントを参照)が加えられるものと考えられる。》
またさらに、基底状態(n=1)の電子のエネルギーE1はボーア理論によって、
E1=2π2k2m℮2/h2
≒2,18×10-18J (13,6eV)
と求められるのであるが、このエネルギー(イオン化エネルギー)E1は、電子が秒速2187,7kmで直進運動したときの回転拡張場が持つエネルギー(ℏω㊧γ)と一致する。
γ=1/√[1-(v/C)2] ※{v=2187,7km/s v/C=0,00729=α(微細構造定数)}
=1,0000265731
ℏω㊧γ=E0[1-(1/γ)]×γ
=(8,2×10-14)×0,0000265724×1,0000265731
≒2,18×10-18J
∴ℏω㊧γ=E0[1-(1/γ)]×γ
=2π2k2m℮2/h2
これは、リング状電子が回転するときの速度(厳密には質点化されたリング状電子の質点bが一周332,6pmの円軌道を運動するときの速度v)が2187,7km/s(=αC)であるものと考えて、このときの円環状拡張場の持つエネルギーが、そのままボーア理論における基底状態の電子エネルギーE1に等しいのだ、と解釈することができる。
この場合に、回転拡張場は両端のある円筒形ではなく、円環状(トーラス状)に一つの輪につながっているのであるから、これはもはや円形に閉じた定常な状態の波動、すなわち円形定常波🔷になっているものと考えられ、そのエネルギーは定常であるがゆえに一定であって、これが変化する(減少する)などということはあり得ないのである。
※{上記🔷の複数光子の円形定在波とは、その形態や規模が内容的にまったく異なる。}
したがって、たとえば「一個の粒子としての軌道電子がそのエネルギーを失って、渦巻状に原子核へと落ち込む・・・」等々といったことも、この具体的描像においては一切あり得るはずがなく、逆に、この円環状拡張場を纏ったリング状電子が連続的にみるみると膨張し、その結果陽子の持つ収縮場の引力(クーロン力)から引きはなされて、一個の水素原子そのものが崩壊する・・・などということも起こり得ないのである。
そしてさらに、このような具体的描像の水素原子模型にあっては、存在確率において導入されるという量子論特有の電子雲といった概念についても、本論においては一切不要にして無用であると言える。
前出のように、リング状電子が半径r(ボーア半径)の円周上を回転するときの速度(rω)は2187km/s(ボーア速度)である。ならばそこで、円環状拡張場が半径rの円周上を回転するときの速度はといえば、これは第15章で述べたように、右図回転拡張場の円周上の任意な一点における質点bの速度は、常に一定不変の光速度Cなのである。
すると、リング状電子と円環状拡張場それぞれの回転速度の比は、2187:300000=1:137となり、たとえばリング状電子が一回転する間に円環状拡張場は137回転することになる。この場合に、この基底状態における水素原子は極めて安定した定常な状態にあるものと考えられ、その円環状拡張場を纏ったリング状電子が現す定常波の波長が、〔λ1=h/mv=2πr〕の約333pmであるということになる。
一方1/137という値は、電磁相互作用の強さを表すときの単位のない無次元量の値として、微細構造定数αと表記され、あるいはまた、これがスピン軌道相互作用によるエネルギー順位の差を規定するときの定数でもあるとされる。
ところがここで、スピン角運動量とは、もともとは小さな粒子としての電子が自転するときの、その回転の大きさを表わすものであって、ボーア半径というより大きな範囲に展開されるリング状の電子が、そのような物理量を持ちうるはずがなく、本論においては、そもそもスピン軌道相互作用という物理現象そのものがありえないということになる。
したがって、もしもそのような何らかの相互作用があるとするならば、それは粒子としての電子のスピン角運動量には関係なく、恐らくはボーア速度で回転するリング状電子と、光速度Cで回転する円環状拡張場の二者による相互作用であるものと考えられるのである。
ところで、本論における水素原子の電子と陽子の間には、何もないただの空間があるわけではなく、そこには光速度Cで回転する円環状拡張場が存在する。この場合に、基底状態のリング状電子と陽子の距離は、円環状拡張場の半径と同一のボーア半径53pmであり、その円環状に展開する回転拡張場は、中心に位置する陽子とリング状電子の間に入って、その距離を一定の53pmに保つ働きをなしていることになる。
また、前出のように直線軌道を運動する電子の回転拡張場の半径rは、その速度vに反比例するのであるから、これは電子の速度vがより遅いほどより大きく、より速いほどより小さくなる。この場合に、静止状態にある電子の拡張場には、いかなる回転もなければその厚さも最低の薄さになっていることになるが、その大きさ(半径r)に関しては無限大に広がっていることになる。
そして、この電子がわずかにでも速度vを持つとき、その拡張場は速度vの大きさに準じた回転を始めることになり、因みに、速度vがボーア速度の約2187,7×105㎞/sに至ったとき、その回転する拡張場の中心から約53pm隔たった場所の回転速度が、すなわち光速度Cの値を現すことになる。
そうすると、この場合の電子は直線軌道をボーア速度で運動しているのであるが、これが陽子の持つ収縮場によって円軌道運動を行うときの姿が、すなわち円環状に展開する回転拡張場を纏ったリング状電子に他ならず、その円環状の回転拡張場は、中心に位置する陽子とリング状電子の間に入って、その距離を一定の53pmに保つ働きを為していることになる。
そしてさらに、これまで名だたる天才物理学者たちによって語られてきた、深遠で神秘的な様相をもつとされる微細構造定数が、実はリング状電子と円環状拡張場の回転速度の比を表わすものであるとするならば、その1/137なる比そのものが、水素原子の安定した姿を生じせしめるボーア半径53pmの値を実現し、かつその客観的実在性を保証しているものと言えるはずである。