第16章【質量とエネルギーの等価性】

 一つの森は無数の木々の集合体であって、すなわち一つの森は複数の木によって形成される。この一つの森と複数の木という二者の観測は、本来同一の存在であるその対象を、二つの異なる視点で観測した場合のそれぞれの描像を述べるものであり、端的には複数の木をよりマクロからの視点で観測したものが一つの森であり、逆に一つの森をよりミクロからの視点で観測したものが複数の木であるといえる。

 同様に電子の場合は、これを形成するのは複数の円運動光子なのであるから、一つの電子をよりミクロからの視点で捉えたものが複数の円運動光子であり、逆に複数の円運動光子をよりマクロからの視点で捉えたものが一つの電子であるということになる。

 すると電子は、これをよりマクロからの視点で捉える場合には、固有な質量mを有する単一な個としての存在なのであるが、よりミクロからの視点で捉える場合には、それぞれにhνのエネルギーを持つ光子が複数個集まって円運動を行う、いわゆる複数のエネルギー量子の系であるということができ、はたして電子が質量meという物理量を有する存在であるのか、あるいはそれら複数光子の系全体がエネルギーE(n・hν)という物理量を有する存在であるのかは、その観測における視点のあり方が決定していることになる。 

   ※{光子の数量n×個々の光子のエネルギーhν=系全体のエネルギーEe} 

 したがって、一個の電子はこれをよりマクロからの視点で捉える場合にはそこに質量mという物理量が見いだされ、よりミクロからの視点で捉える場合にはそこにエネルギーEという物理量が見いだされるのであるから、よりマクロからの視点による電子の質量meそのものをよりミクロからの視点に切り替えて観測したときの姿が、すなわち複数光子の系全体がもつエネルギーEそのものであるということができ、この場合に質量mとエネルギーEの両物理量は本来同一にして等価であるということができる。 

 もとより、一個の電子が複数の円運動光子によって形成されているのであれば、固有な質量mを持つ一個の電子を細分化したものがそれぞれにhνのエネルギーを有する複数の光子であるといえるし、逆にhνのエネルギーを持つ複数の光子が、ある微小な空間に集中することによって質量meなる一個の電子を作り出している、ともいうことができ、この場合に一電子が持つ質量mと複数光子全体が持つエネルギーEという二つの物理量は、本来同一の存在(実体)に対する二つの異なる視点の観測に他ならないということができる。

 ちなみに特殊相対論によれば、いかなる物体の質量とエネルギーは有名な[E=m]という式が表すようになる比例係数において等価であり、約9,11×10-31kgというまったく微小な質量mを持つところの電子も511000℮(8,2×1014)といった、いわゆる静止エネルギー(質量エネルギー)を有している。 

 この微小な質量mを持つ電子は、これが速度ゼロの静止状態にある場合においても、常に

のエネルギーが内在されているのであるから、この内在する静止エネルギーEと、上記の複数光子の系全体が持つn・hνのエネルギーEeは、本質的にまったく同一のものであると考えられる。

       Ee=E  n・hν=m(8,2×1014)  

 したがって、特殊相対論における電子の静止エネルギーEと、本論における複数光子のエネルギーEeが同一であるとするならば、meなる静止エネルギーEを内在する一個の電子は、それぞれにhνのエネルギーを持つ複数の光子によって形成されているものと解釈することができ、ひいては、相対論における互いに等価な質量とエネルギーの両物理量についても、これらは本来同一の存在に対する二つの異なる視点の観測に他ならないということができる。 

     

✧ 全エネルギーと運動量の等価関係

 さて前章においては、「運動する電子の内的エネルギー〔ℏω㊨〕はその速度vが大きいほどより減少するが、代わって回転する拡張場の持つエネルギー〔ℏω㊧〕は速度vが大きいほどより増大する・・・」と述べた。

 この場合に、速度vが大きいほど減少する電子のエネルギーとは、取りも直さず、本論において述べられるところの複数光子の系全体が持つエネルギーE(=n・hν)のことに他ならず、これはまた、相対論における静止エネルギーE(=m)のことに他ならない。したがって、速度ゼロの静止状態にある電子のエネルギー(n・hν)と、電子固有の静止エネルギーE()は、本来同一であり等しいということになる。

 すると、速度vで運動を行う電子の内的エネルギー(ℏω)は1/γ倍で減少するのであるから、これは              

        ℏω㊨=E×(/γ)

と表わすことができ、たとえばその速度が秒速18万㎞であるとすると、γ1,25でその逆数1/γ0,8であるから、この電子が持つ内的エネルギー(ℏω)は、具体的に

    E×(/γ)(8,2×1014)×(0,8)

            6,56×1014

と求めることができる。            

 一方、電子のエネルギーの減少分は、回転する拡張場がこれを補うのであるから、この回転拡張場のエネルギーについては単純に

       ℏω㊧=Eℏω

となるが、厳密には

       ℏω㊧=E×[1(/γ) ]  ※{1-(/γ)10,80,2}

と表わされ、すなわち

     E[1(/γ)](8,2×1014)×(0,2)

                         1,64×1014

ということになる。

 そこで、この場合の静止エネルギーE(8,2×1014)を1とすると、電子と回転拡張場それぞれのエネルギーは

        ℏω㊨=0,8     ℏω㊧=0,2

であるから、このことは電子が秒速18万㎞で運動した場合、その静止エネルギーE20%は回転拡張場のエネルギーに移行し変換しているということができ、これは速度がゼロのときには電子の内的エネルギー(ℏω㊨またはn・hν)として100%潜在し内在されていた静止エネルギーE20%が、秒速18万㎞で運動する場合には、その電子の周囲に展開する回転拡張場のエネルギーとして表に現れ出てきているものと解釈することができる。

 また、電子の速度がほとんど光速度C(30万㎞/)であるというような0,999 999 9(29,999 997万㎞/s)である場合、γは約759630、1/γは約0,000 001 32であるから、E(/γ)である電子のエネルギーとE[1(/γ)]である回転拡張場のエネルギーは

     ℏω㊨=(8,2×1014)×(0,000 001 32)

               ≒0,000 010 8×1014

       ℏω㊧=(8,2×1014)×(0,999 998 68)

               ≒8,199 989 2×1014

 となる。             

 そうすると、静止しているときには100%潜在し内在していた8,2×1014Jなる電子のエネルギーが、回転する拡張場のエネルギー(ℏω)として移行したときの変換率は99,999 868%となり、もはやこの電子は、ほとんど純粋な波動としての姿になっているということができる。

 

 ところで話は変わるが、相対論的力学によると、質量mなる物体(質点)が速度vで運動するとき、その運動量および運動エネルギーは、それぞれ 

                 P=mv/√[1(/)]   

                 K=mC√[1(/)]-mC 

と表わされ、またその物体が持っている全エネルギーE(物体がもともと持っている静止エネルギーEに運動エネルギーKが加算された、E+Kのすべてのエネルギー。)は、

                E=mC√[1(/)]      

と表わされる。

 この場合に、上記のmCはそのまま物体の静止エネルギーEに等しいのであるから、式は

               E=Eγ  

と書き直すことができ、また式は

                K=Eγ-E またはK=E(γ-1)     ⑸

と表わすことができる。すると、電子が秒速18万㎞で運動した場合、その運動エネルギーKは式により

                K=E(γ-1)

                  =(8,2×1014)×(1,251)

                  =2,05×1014J 

と求めることができる。

 一方、秒速18万㎞で運動する電子の回転拡張場のエネルギーについては、前出のように

        ℏω㊧=1,64×1014

なのであるが、この回転拡張場のエネルギーに、この場合のγ(1,25)を掛け合わせるとどうなるのか。これは具体的に     

      ℏω×γ(1,64×1014)×1,25

                2,05×1014

となり、すなわち上記式の相対論的な運動エネルギーKと一致する。

 またその速度が、0,999 999Cの非常な高速度である場合も、

      K=E(γ-1)

            (8,2×1014)×(7071)

            ≒5790×1014

    ℏωγ=E[ 1(/γ) ]×γ

           (8,1884×1014)×707

            ≒5790×1014

であり、あるいはv=0,01(3000/s)といったより低い速度である場合にも、

       K=(8,2×1014)×(1,000 0501)

           0,000 41×1014J 

     ℏωγ(0,000 41×1014)×1,000 050

            ≒0,000 41×1014J 

なのであるから、回転拡張場のエネルギー(ℏω)γを乗じた値と、相対論的運動エネルギーKとは、その速度がいかなるものであったとしてもすべて一致する。

 ということは、電子の相対論的運動エネルギーKと回転拡張場のエネルギー(ℏω)γを乗じた値は同一であり、すなわち

         E(γ-1)=E[1(/γ)]×γ  

                 ∴K=ℏω×γ

が成り立つと同時に、結局、電子の相対論的運動エネルギーKは、本論における回転拡張場のエネルギー(ℏω)γを掛け合わせることによって求めることができるということになる。ならばそこで、この場合の〔ℏω×γ〕なる式は、具体的にその運動する電子についてのいかなる状態を表しているものなのであろうか。

 

 本論における電子は、特殊相対論とは異なり有限な広がりを持つのみならず、これが速度vで運動した場合にはその長さは進行方向へγ倍で拡張し、それを包み込むように展開しているはずの回転拡張場も、やはりγ倍で拡張していることになる。したがって、たとえばその速度が具体的に0,999Cである場合には、下図のようにその長さも静止状態のときのγ倍、すなわち約22,37倍に拡張する。          

 すると、上図においてはその回転拡張場は、静止しているときの22,37倍に長くなり、しかもその長くなった円筒状の拡張場はω㊧なる角振動数〔=E[1-(1/γ)]/ℏ〕で左回転を行っているのであるから、この進行方向へ22,37倍に長くなった回転拡張場全体が持つエネルギーは〔ℏω㊧×γ〕で表わされることになり、その値は具体的に  

  ℏω㊧×γ=E[1-(1/γ)]×γ

             =(8,2×1014)×0,9553×22,37

       ≒175,2345×1014

と求めることができる。

 したがって〔ℏω㊧×γ〕の式は、進行方向へγ倍で拡張した円筒状の回転拡張場全体が持つエネルギーを表していることになり、その値は同時に、この電子が持つ相対論的な運動エネルギーKに等しいということになる。

 一方、この場合のγ倍に拡張した電子のエネルギーであるが、これは静止状態の電子がもともと持っていた(8,2×1014J)の内的エネルギーは1/γ倍で減少し、その値は

     ℏω㊨=E×(1/γ)

              =(8,2×1014)×0,0447

        ≒0,36654×1014

となるのであるが、この0,36654×1014Jのエネルギーで右回転する電子は、さらにγ倍(22,37倍)で進行方向へ拡張しているのであるから、この細長く拡張した棒状電子全体が持つエネルギーは、結局

     ℏω㊨×γ=(0,3665×1014)×22,37

                   ≒8,2×1014

であるということになる。

 ということは、静止しているときには8,2×1014Jという内的エネルギー(静止エネルギーE)を有していた電子は、0,999Cの速度で運動した場合にはその個々の光子のエネルギーは1/γ (0,0447)倍で減少するものの、細長く拡張した一本の棒状電子全体としては、その減少したはずの0,36654×1014Jなるエネルギーはγ(22,37)倍でもとの8,2×1014Jなる値にもどっていることになる。                

 すなわち、この棒状電子が持つエネルギーは理論的過程としては厳密に

       ω㊨×γ=E×(1/γγ

           =E×1

           =E

と表され、この場合にいかなる電子はこれが速度vで運動すると、よりミクロからの視点による個々の光子の(hν)なるエネルギーは1/γ倍で減少しその右回転の角振動数(ω㊨)も1/γ倍で減少するが、一方ではその進行方向の長さがγ倍で増大する(拡張する)ために、よりマクロからの視点によるその一本の棒状電子全体の内的エネルギーは常に一定の値となって変化せず、結果的にその質量(E/)は静止状態にあるときのmなる値をもって変化しないということができる。

※{厳密にはこの場合に変化するのは運動量P(mv)なる物理量なのであって、「運動する電子固有の質量そのものがγ倍で増大し重くなる」などということはあり得ない。}

 するといずれにしても、この細長く拡張した棒状電子全体のエネルギー(ℏω㊨γ)と、これを取り巻く円筒状回転拡張場のエネルギー(ℏω㊧γ)の和、すなわち0,999Cで運動するところの電子の総エネルギーは、

      (ℏω㊧×γ)+(ℏω㊨×γ)=(175,2345×1014)+(8,2×1014)

                 ≒183,4×1014

であるということになるが、他方、前出⑷式の相対論的な全エネルギーE(=Eγ)は

       E×γ=(8,2×1014)×22,37

                 ≒183,4×1014

となり、よって本論における(ℏω㊧×γ)+(ℏω㊨×γ)なる総エネルギーと、相対論的な(Eγ)なる全エネルギーEは一致することになる。

 したがって、運動する電子の相対論的全エネルギーEは、棒状に拡張した電子全体の不変なエネルギー(ℏω㊨γ)と、これを取り巻く回転拡張場全体のエネルギー(ℏω㊧γ)の和として求めることができ、この場合に、速度ゼロの静止状態にある電子はよりミクロからの視点において複数光子のn・hνなる静止エネルギーを持ち、よりマクロからの視点において質量meなる物理量を持つのであるから、同様に速度vで運動する電子はよりミクロからの視点において

            (ℏω㊧γ)+(ℏω㊨γ)

なる全エネルギーEを持ち、よりマクロからの視点において

      (Eγ/)×v

なる運動量Pを持つということができる。 

※{上式は、相対論的質量としてのmγを用いて(meγ×v)と表わすこともできる。しかし本論においては、あくまでも電子の全エネルギー(Eγ)を質量に換算したときの値として(Eγ/)を用いるものする。}

 そうすると、運動する電子の相対論的全エネルギーEと相対論的運動量Pの両物理量についても、これらは本来同一の存在に対する二つの異なる視点の観測に他ならないということができ、また、複数光子のn・hνなるエネルギーは電子の静止エネルギーEに等しく、円筒状に拡張した回転拡張場全体のエネルギー(ℏω㊧γ)は電子の運動エネルギーKに等しいのであるから、これら本論における一連の考察は、特殊相対論における静止エネルギーE、運動エネルギーK、全エネルギーE、および運動量P等の物理概念を、より具体的な描像をもって構造的に説明する、ということができる。